December 2017

10月15日の大火 証言

 

ブランシュ:避難の準備は万全だった。馬は専用のトレーラーに乗せたし、手伝いも頼んだわ。夫は出張で不在で娘と二人だけだったから。

だけど、頼みにしていた3人が来られなかった。それでも、トレーラーと乗用車を交代で運転しながら、一人でも安全な場所まで行かれるだろうって思っていたのよ...。火があんなにすごい速度で移動するなんて、考えてもいなかった。

あっという間よ。家が炎に囲まれて何も持ち出せなかった。馬は放したわ。2頭とも、ものすごい勢いで丘に向かって走り去った。まだ若くて体力があるし、本能があるから...生きていてほしい。

それからは無我夢中だった。娘を車に乗せて、両側が火の壁になった道路を必死で走り抜けた。ペドロガオンが思い浮かんだわ。5分遅れていたら逃げ切れなかったと思う。ああ、ヤギも子豚も鶏も、置き去りにするしかなかった。

(ヤギと子豚は奇跡的に生き延びた。鶏は全滅。馬は一頭が死体で見つかったが、もう一頭は2ヶ月経った現在でも、行方はわからない。)

運命の一夜 10月15日の大火

 

真夜中の逃避行から一週間。雨はまだ来ない。空気も大地も乾燥しきっていた。雑草も下草も茶色に変色し、木々はほこりをかぶってうなだれていた。ポルトガル南部ではダムが干上がり、深刻な水不足となっていた。10月半ばだというのに、最高気温は35度から40度。いつどこで火災が発生しても不思議ではない。火が出ればあっというまに広がるだろう。連日、午後になると熱い風が吹き荒れる。周りを見回してどこにも煙が上がってないことを確認すると、5分くらいは安心できた。消防署のサイレンが鳴ったり、消防ヘリコプターや消防機の音が聞こえればベランダに出て周りを見回し、山火事サイトをチェックした。

10月15日日曜日。いつものようにタブアの市場に出かけ、ベンフェイタに住む友人のマーティンと一緒に帰宅した。彼は一週間前に遊びにくる予定だったが、先週の森林火災で延期になっていた。

午後14時半頃、扇状に広がりながら流れてくる煙に気がついた。山火事の発生状況を即時に更新するfogos.ptを見てみると、火元はベンフェイタ方面で先週の火事が再燃したらしい。家からは直線距離にして15キロ程の場所だ。マーティンは、家が心配だと帰宅した。