アリスの誕生日
隣のアリスのお誕生日に呼ばれた。私たちがポルトガルに越して以来の友人で、この集落の中でも信頼され、一目置かれる存在だ。7人姉妹の一番上で、姉妹の中で一人だけ、運転免許を持っていた。毎日、昼食後に数時間、営業される集落のコミュニティ喫茶店を切り盛りしていた。文字が読めない村人たちの手紙や書類を読んであげていた。私たちが長期に家を開けるときには、必ず彼女に声をかけて鍵を預けて行った。
アリスはこの誕生日で88歳になった。サラザールの独裁政治が始まった年に生まれ、人生のほぼ半分を独裁体制の下で生きてきたことになる。無血革命によって、サラザール政権が打倒されたのは1974年4月25日 。ポルトガルは共和国となった。
独裁政権下での生活は貧しくて大変だったとは聞いた。だが、集落での生活には楽しみもあった。村人が集まって一緒に音楽を楽しんだり、踊ったり。誰もが農業を営んでいたから、現金がなくても食べることにはそこまで困ったような話は聞かない。もっとも、この集落の人たちは一時期、リスボンに出稼ぎに行くなど、相対的には恵まれていたようでもある。アリスも、何年間か夫と共にリスボンで生活している。
いつも笑顔を絶やさずに、誰の話でもきちんと目を見て真剣に聞いてくれるアリス。ポルトガル語がまだほとんど話せなかった私たちに、彼女だけはゆっくりと分かりやすいように話してくれた。
最近では足の具合が悪く、日によっては歩行が困難になってきた。運転免許は数年前に返納。コミュニティ喫茶店は一番下の妹が切り盛りするようになった。庭に出ることはほとんどなくなってしまったが、いつまでも元気で長生きしてもらいたい。
写真
一番右側がアリス。

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