タブアの山火事
8月8日午後、庭仕事に取りかかろうとしていた矢先、タブア消防署のサイレンが鳴り響いた。山火事だ。庭から空を見上げても、庭木が邪魔をして、どこから煙が立ち上っているのか見えない。二階のベランダに出ると、目の前の丘の向こう側に黒い煙が細く立ち上っている。fogos.ptのサイトを見ると、直線距離で3キロ程のヴァルジアとカンドーサ村のあたりが出火元となっている。間もなく、空中消火機(消火機能のある飛行機やヘリ)が活動を開始。最初は2機、すぐに7機に増えた。
20分くらいで一時、煙の量が減ったので、初期消火が功を奏したかと思ったが、すぐに黒煙が広がり始めた。空中消火機は家の真上をひっきりなしに往復する。運良く、家は風上にあるので、突然風向きが変わらない限り、大丈夫そうだ。それに、家と火災現場の間には四車線の高速道路もある。それにしても、低空飛行する航空機の騒音はかなりのものだ。2機ずつ、南方から現場に接近し、消火活動後は北に抜けて行く。山火事はもちろん心配だが、航空事故も心配になった。燃料を積んだ飛行機が落ちたら、あっという間に火の海だ。
夕方、スティーブが火災現場近くに住む友人に電話すると、「今、しゃべっているどころじゃない。火がすぐそこまで迫っている」と切羽詰まった様子だった。数時間後に再度連絡すると、大丈夫だったとメッセージが来た。
翌9日。午後2時半頃、昨日と同じ場所から黒い煙が上り始めた。すぐに空中消火機が活動開始。今日は飛行コースが異なる。どうやら、飛行機は風上から接近するようだ。家の上を通らないということは、家は風上ではないということ!? 空中消火機が頭上を通っても心配、通らなくても心配だ。
乾いた強風が、向きを頻繁に変えながら吹き続ける。万が一のために、水源の確認をした。逃げることになったら、ネコたちも連れて行かなければならない。何を持って逃げればいいのか。空中消火機は日没ぎりぎりまで、消火活動を続けた。
この山火事の消火作業には一日目は消防士348人、消防車86台、空中消火機10台、二日目は消防士424人、消防車117台、空中消火機7台が出動した。
今この瞬間(8月10日の午後5時半頃)、ポルトガル全土で森林火災は191件起きている。ポルトガルは地中海に面する欧州5カ国の中で国土は最小ながら、森林火災発生件数は最多。温暖化の影響はもちろん指摘されているが、現金作物のユーカリの単一及び乱植林が延焼の最大の原因ではないか。金になるからと防火帯も設けずに、道路の際まで植えるからあっという間に燃え広がる。
いくら製紙産業(原料はユーカリ)がポルトガルでの重要輸出品目だと言っても、毎年、起きる森林火災で焼失するユーカリそのもの、消火活動に投じられる資源、延焼の憂き目に遭う地方の農園や民家更には人命を考えたら、製紙産業で稼ぐ外貨は損失を下回るのではないだろうか。
国の経済発展を名目とした中央都市部への富と権力の一極集中と地方への負担押し付けは、日本も、遠く離れたポルトガルも同じだ。資源を現金化することを経済発展と呼ぶ経済優先の前に、国民を守るという発想はなかなか出てこない。
写真は上から、サイレンが鳴った直後の煙、数分後に拡大した火災、現場に向かう空中消火機。



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