皆既月蝕
9月7日の日没時に満月の皆既月蝕があるから、人が来なくて静かで、月がよく見える穴場で、月蝕を見ながら発泡ワイン(つまりシャンペン)でお祝いしようというお誘いがあった。駐車スペースに車を止めて、ちょっと険しいところもあるけれど20分ほど歩くだけ。
総勢5人と犬3頭。私たち二人、友人のジョンとベティと犬のネオ、声をかけてくれたマーティンと彼の犬2頭。待ち合わせた駐車スペースはポルトガルの最高峰エストレラ山脈を反対側に降りる、曲がりくねった道路脇にあった。私は何となく、駐車場があって、その片隅の登山口(日本だったら道標がある)から森の中を歩いて行った先に開ける眺めのいい高台を想像していた。だが、目の前にあるのはガードレールの向こう側の岩がゴロゴロと転がった斜面とその前に聳え立つ岩山だけ。
マーティンは何事もないかのように、この斜面を降りて、あの岩山に登るんだ、以前に一度、登ったことがあるから道はわかっているよ、と言う。私たち4人は顔を見合わせた。
急斜面を20メートルくらい降りて岩山の裾にたどり着く。そこから岩登りである。高低差約100メートル。フリークライミングに近い。最初からわかっていれば、それなりの格好をしてきたのに、山道を少し歩くだけだと言うからまともなバックパックもない。持ってきたバッグを無理やり斜めがけにして岩に挑むことになった。
中型犬の3頭は大きな岩には登れない(足が短いから)。飼い主の一人が下から押し上げ、上で待ち構えているもう一人が引き上げる。そのうち1頭が落伍して、どこかに行ってしまった(車に帰っていた)。
迷いそうな場所3ヶ所に、目印となるランタンを点灯した状態で設置する。登り始めて45分。やっと彼の言う「誰もいなくて見晴らしがいい穴場」に辿り着いた。岩山の頂上は吹きっさらしで冷たい風が吹いている。
...確かに。こんな岩登りしてまで皆既月蝕を見に来る人は先ずいない。陽は地平線に沈み、上ってきた月は雲の向こう側。雲が途切れると部分蝕月が見えた。
「せっかくだから、ピクニックね。シャンペンを開けよう!」 とマーティンは至って楽天的。暗くなる前に降りるということだったけれど、大丈夫なのかしら。心配をよそに、とりあえずは乾杯。ジョンがバスケットに入ったピクニック用のシャンパングラスやお皿を取り出した。この頃には月が天空高く煌々と輝いていた。岩山の頂上で持ち寄った軽食を食べながらのお月見である。
帰途につくころにはもうかなり暗くなっていた。途中3箇所にマーティンが道標として残してきたランプを目指して足を踏み外さないようにゆっくりと岩山を降りる。が、足の短い犬たちは怖がってなかなか降りてきてくれない。犬をなだめすかし、抱き抱えながらゆっくりと岩を降りる。気が気ではない。いつも持っているヘッドライトが役に立った。ヘッドライトがない人はスマホで岩道を照らす。
駐車場に戻るまでに1時間(犬が怖がってなかなかついてきてくれなかったから)。満月に照らされながら、夜道を無事に戻ってきた。思いもしない「冒険」になってしまったが、岩登りは楽しかった。次回はそのつもりで装備も整えて、そのうちまた是非、やってみたい。
写真は上から
登った岩山
こんな崖道を歩いた
岩の頂上



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