大規模森林火災 2024年

今年は大丈夫だと思っていた。7月に入るまで雨が続いていたし、7月と8月も2度ほど熱波はあったけれど、最高気温は25度前後と全体的に涼しかった。9月に入って最高気温が33度前後にはなったけれども、夜になると10度から15度まで下がって、肌寒い日が続いた。当然乾燥はしていたが、夏の間中で地表の温度が上がらなかったので、このまま秋、そして冬に向かっていくのだろうと思っていた。

...ところが、9月15日(日)になって、森林火災警戒警報が出された。気温は30度前後しかなかったが、湿度が極端に低く、強い風が予測されていた。翌16日には森林火災はあっという間にポルトガル中部・北部に広がった。朝、窓から外を見ると晴れている日にはくっきりと見える山脈が煙に包まれ、まるで砂嵐の砂壁のように空に聳え立っている。山脈の向こう側、アヴェイロ地域で大規模な森林火災が発生したのだ(下に貼り付けた日本大使館からのメール参照)。一時、私たちが住むあたりまで、煙が漂ってきた。

それだけにはとどまらなかった。fogos.ptのサイトを見てみると、あちこちで火の手が上がっている。タブア町の北東でも大規模火災が発生、こちらに向かっている。風向きのおかげで、どうやらウチのあたりは避けて通ってくれそうだ。煙も灰も飛んではこないけれど、だんだんと煙の壁に囲まれてくるような閉塞感を感じる。
家の周りにある燃えそうなものを庭の端に移動させる作業をしていたら、どこかから女性の叫び声が聞こえてきた。何を言っているのかはわからなかったが、周りを見回してみるとすぐ近くに黒煙が上がっているのが見えた。家の中にいた連れ合いに声をかけ、居候している友人に注意を促した。作業を中断するわけにはいかないので、とりあえず私は燃えそうなものを移動させた。

煙の方向には、つい最近引っ越してきたオランダ人夫婦と乳幼児二人が住んでいる。その上にはフランス人の夫婦。出火元はウチから直線距離で約500メートル。作業が終わってからとりあえずは安全靴を履いて作業用の手袋を持って、訪ねた。行ってみると彼らの家のすぐ下の道路脇が燃えていた。

オランダ人夫婦は外出中。フランス人のヴァレリーは「こんなに近くで森林火災を見たのは初めてよ、どうしたらいいのかわからない」とかなり動揺している様子。オロオロしていても事態は好転しない。庭に出してあったクッションや上着など簡単に火が移りそうなものは全て家の中に入れて、ヒラヒラしたカーテンがついている出入り口の扉を閉めた。家の周りに水を撒いた方がいいよ、と言って気がついた。この家には水道がなかったのだ...。でも、一応、蛇口とホースはあった。どうなっているのかはわからなかったけれど、水があるのならとにかく、家の周りと車に水をかけようと蛇口を捻ったが、水はほとんど出てこない。

その頃には、連れ合いも到着して、オランダ人夫婦に火事が発生したことを伝えていた。二人で現場を見に行くことにした。消防団はすでに到着して消火作業をしている。消防飛行機も上空を旋回している。fogos.ptによれば、この火災に動員されたのは消防車11台と消防士28人。小規模な森林火災にこれだけ人員や車両を投入できたのは、この時たまたまタブア消防署が他の地域の応援消火に出動していなかったからなのだろう。消火ヘリコプターも一機、投入された。30分後には火は消し止められた。

9月15日から18日の夕方まででポルトガル本土の10万6千ヘクタールが焼失した。これはここ10年間で、2017年の大火に続く規模である。また、フランス、スペイン、ギリシャ、イタリア、モロッコが消火支援のために消防飛行機や消防ヘリコプターを出勤させた。

2017年の大火の後で、森林火災防止予算は10倍に、消火活動予算は倍になっている。それでも今回の大火では消防士3人が亡くなった。18日の夜までに71人が放火の疑いで逮捕された。

在ポルトガル日本大使館からのメール
●9月15日(日)、ポルトガル中央地域アヴェイロ地域のアルベルガリア・ア・ヴェーリャ市等で大規模な火災が発生し、政府は「警戒事態(Situacao de Alerta)」(注)を全土に発出しました。
●17日付報道では、これまでに死者3名及び21名の負傷者が確認されており、500人以上の消防士が火災の鎮火作業にあたってます。それに伴い、リスボンと北部主要都市ポルト市を結ぶ幹線道路(A1)や火災地域周辺の高速道路(A13)の一部で交通規制が行われてます。
●不要不急の当該地域への立ち入りは避け、立ち入る場合も、現地報道等で最新情報の入手に努め、周囲で危険を察知した場合は当局の指示に従い、速やかに避難するなど身の安全を確保してください。
(注)防災基本法(Lei de Bases da Protecao)に定められた3つの対応フェーズの1つで、他に「危機事態」、「災害市民事態」があります。消防士等の動員、住民への勧告や警告、対象地域での火の使用等、リスクを増大させる活動が制限されます。

森林火災関連ニュースのリンク
https://www.rtp.pt/noticias/pais/incendios-em-portugal-a-situacao-ao-min...

https://www.bbc.com/news/articles/cj6eep7zx8po

https://www.theguardian.com/world/2024/sep/17/portugal-wildfire-deaths-r...

 

写真は上から

fogos.ptのサイトから

Googleマップにも大規模森林火災の表示が...

コペルニクス<https://forest-fire.emergency.copernicus.eu/apps/effis_current_situation/>のサイトから、ポルトガル中部・北部の様子

同じくコペルニクスからポルトガル中部の拡大図